教員から民間企業への転職を考えるとき、 「年収は上がるのか、下がるのか」は避けて通れない論点です。

この記事では感覚論を避け、上場企業3,778社を1社ずつ数えるという方法をとります。 公立小・中学校教員の平均年収695万円を基準に、 「これ以上を出している会社は何社あり、どこに集まっているのか」を示します。

教員側の数値は総務省「地方公務員給与実態調査」第5表の全国の公表値です (給与月額×12+期末・勤勉手当の年額。データの出典と算出方法)。

出発点:695万円以上の上場企業は1,556社ある

基準にする教員の区分 平均年収 この額以上の上場企業 全体に占める割合
公立高校教員(全国平均) 722万円 1,334社 35.3%
公立小・中学校教員(全国平均) 695万円 1,556社 41.2%

小・中学校教員の695万円を基準にすると、上場企業の41.2%がこれ以上を出しています。 「転職すれば年収が上がる」とも「下がる」とも言い切れない位置です。

ただし、これは全国の平均です。教員の給与は地域手当(勤務地で0〜20%)や年齢で変わるので、 自分の年収がこの平均より高いか低いかで、上回る会社の数は大きく動きます。 自分の年収と年齢で数えたい場合は公務員と民間企業の年収を比べるが使えます。

1,556社はどこに集まっているのか

695万円以上の1,556社を業種別に分解すると、偏りがはっきり出ます。 下の表は、その業種の中で695万円以上を出している会社の割合が高い順です (母数20社以上の業種に限定)。

業種 695万円以上 業種の社数 業種内の割合 業種の平均
証券・投資 28社 32社 88% 962万円
電力・ガス 33社 41社 80% 848万円
製薬・医療 59社 81社 73% 855万円
建設・不動産 176社 281社 63% 794万円
銀行・金融 73社 125社 58% 782万円
電機・電子 122社 228社 54% 749万円
素材・化学 144社 291社 49% 704万円
機械・設備 102社 212社 48% 697万円
物流・運輸 54社 113社 48% 723万円
自動車・輸送機 37社 79社 47% 694万円
商社・卸売 133社 304社 44% 716万円
精密機器 19社 45社 42% 705万円
食品・飲料 55社 131社 42% 681万円
鉄鋼・金属 62社 157社 39% 677万円
IT・通信 223社 611社 36% 684万円
製造業その他 32社 114社 28% 618万円
サービス 127社 543社 23% 621万円
小売・流通 51社 311社 16% 569万円
アパレル・繊維 5社 45社 11% 602万円

証券・投資では32社中28社 (88%)が695万円以上を出しています。 一方、収録社数が最も多いIT・通信は611社中223社で 36%、サービス業は543社中 127社で23%にとどまります。

つまり「民間に行けば上がる」のではなく、 どの業種に行くかで確率が大きく変わるというのが実データの姿です。

数が多い業種と、割合が高い業種は別

転職先を探すとき、この2つは混同されがちですが別の話です。

  • 該当社数が多い業種:建設・不動産176社、 素材・化学144社、商社・卸売133社、 電機・電子122社
  • 割合が高い業種:証券・投資88%、 電力・ガス80%、製薬・医療73%

証券・投資は割合こそ88%と圧倒的ですが、 そもそも32社しかありません。 求人の絶対数で考えれば、281社ある建設・不動産のほうが選択肢は多くなります。

割合が高い業種は「入れれば高い」、社数が多い業種は「入り口が広い」。 どちらを優先するかは、転職の緊急度と自分の経歴によって変わります。

教員の経歴が評価されやすい方向

年収の分布だけでは決まらない部分について、事実として言えることを整理します。

教員が民間で持ち込める経験は、 多人数に対する説明・進行の技術、年間単位のカリキュラム設計、 保護者や外部機関との折衝にあたる部分です。 これらは職種としては教育・研修、人材、営業、企画のあたりに対応します。

ただし当サイトが持っているのは組織ごとの平均年収であり、 職種別の初任給や中途採用時の提示額ではありません。 「業種の平均が794万円だから転職すれば同額になる」ということではない、 という点は明確にしておく必要があります。

平均年収はあくまで在籍者全体の平均です。 中途入社の初年度は、その会社の平均を下回るのが通常です。

年収が上がる転職の条件

ここまでの数字を整理すると、条件は3つに絞れます。

  1. 業種を選ぶ。 上の表で割合が高い業種(証券・投資88%、電力・ガス80%、 製薬・医療73%など)を狙うと、上がる確率が高くなります
  2. 規模を選ぶ。 従業員1万人以上の企業の平均は827万円、 1,000〜2,999人は751万円、300〜999人は669万円です (従業員数と年収の関係で詳しく検証しています)
  3. 現在地を正しく把握する。 全国平均より年収が高い地域の教員と低い地域の教員では、 同じ転職先でも上がるか下がるかが逆転します

逆に言えば、業種と規模を選ばずに転職した場合、年収が下がる確率のほうが高い というのが3,778社の分布から読み取れることです。

数字を読むときの注意

  • 教員側の数値は総務省の公表値(全国平均)からの年収換算です。 勤務地・年齢による差は含みません
  • 企業側の数値は在籍者全体の平均であり、中途入社時の提示額ではありません
  • 上場企業に限った集計です。 未上場企業を含めた民間全体の水準はこれより低くなります
  • 退職手当の差は含みません。 公務員の退職手当は民間と制度が異なるため、 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です
  • 業種分類は当サイトが34区分に正規化したものです。分類の基準は出典と算出方法に記載しています

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