警察官や消防士の年収は「安定しているが特別高くはない」と語られがちです。 しかしその根拠として示されるのは、たいてい民間の平均給与という1つの数字です。

この記事では、警察官・消防士の平均年収を上場企業3,778社の分布の中に置いて、 何社がその額以上を出しているのかを直接数えます。

数値は総務省「地方公務員給与実態調査」第5表(職種別職員の平均給与額)の 全国の公表値です。年収は「給与月額×12+期末・勤勉手当の年額(実額)」で出しています (データの出典と算出方法)。

結論:警察官は中央値より上、消防士は中央値付近

区分 平均年収 職員数 上場企業3,778社の中での位置 この額以上の企業数
警察官(全国平均) 779万円 258,616人 下位から75.3% 934社
消防士(全国平均) 681万円 165,253人 下位から55.0% 1,701社

上場企業の中央値は661万円です。 警察官の779万円は上位24.7%の位置にあり、 この額以上を出している上場企業は934社です。 消防士の681万円は下位55.0%で、ほぼ真ん中にあたります。

同じ「公安系」とひとくくりにされがちな2つの職種で、 分布上の位置は20.3ポイント、 社数にして767社分離れています。

差をつくっているのは手当

月額を給料(本給)と手当に分けると、差の出どころが分かります。

区分 給料月額 諸手当月額
警察官 345,913円 148,600円
消防士 320,449円 105,825円

給料月額の差より、諸手当の差のほうが大きいのが特徴です。 警察官には夜間・休日の勤務や捜査・警ら活動に伴う特殊勤務手当、超過勤務手当が多く支給されます。 消防士も交替制勤務の手当がありますが、警察官ほどには積み上がっていません。

また、警察官は都道府県の職員、消防士は主に市町村(一部事務組合を含む)の職員です。 採用する団体の規模が違うことも、給料表と手当の水準の差に表れています。

勤務地による差は、公表値では分けられない

「警視庁や東京消防庁は高い」という話はよく聞きますが、 総務省の第5表は全国の合計で、都道府県警察ごと・消防本部ごとの平均は公表されていません。 このため当サイトでは勤務地別の数字を載せていません (以前は出典のない推計値を載せていましたが、2026年10月に取り下げました)。

参考になるのは、同じ団体の一般行政職の年収です。 地域手当の支給率は勤務地で0〜20%の差があり、 市区町村職員の年収や都道府県の年収ランキングで 団体ごとの水準を確かめられます。

民間の分布と比べたときの特徴

上場企業3,778社の年収分布は次のように開いています。

位置 平均年収
下位10% 493万円
下位25% 559万円
中央値 661万円
上位25% 777万円
上位10% 924万円
上位5% 1,054万円
上位1% 1,419万円

民間は下位10%から上位1%まで大きく開いています。 警察官・消防士は職種の平均で見る限りこの分布の中ほどにあり、 上振れの余地は小さいかわりに下振れも小さい、という位置づけです。 参考までに、市区町村職員1,721団体の開きは1.59倍です (市区町村職員の平均年収)。

なお、ここで比較しているのは上場企業です。 上場企業は日本の企業全体のごく一部で給与水準は相対的に高いため、 未上場企業を含めた民間全体と比べれば、警察官・消防士の相対的な位置はこれより上がります。

数字を読むときの注意

  • 年収は月額と賞与の公表値からの換算です。 給与月額(時間外勤務手当を含む)×12に、期末・勤勉手当の年額を足しています
  • 在籍者全体の平均です。採用直後はこれよりかなり低く、上位の階級はこれより高くなります
  • 警察官には、警視正以上の国家公務員(地方警務官)は含まれません
  • 退職手当・年金は含みません。 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です
  • 企業側の数値は有価証券報告書の単体の平均年間給与です。連結子会社は含みません

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