公務員試験を受けるとき、「国家公務員か地方公務員か」「県庁か市役所か」で迷う人は多いはずです。 仕事の内容や転勤の有無で選ぶのが本筋ですが、年収がどう変わるのかも気になるところでしょう。
当サイトに収録している1,788の自治体・機関の実データで、この問いを検証しました。
地方公務員の数値は総務省「地方公共団体別給与等の比較」(令和7年)から年収に換算した値(公表値からの換算)、 国家公務員は人事院が公表する行政職俸給表(一)の職員全体の平均年間給与(現行・実額)です。 国家公務員は府省ごとの平均年収が公表されていないため、区分の平均だけを並べます。
区分別の年収
| 区分 | 機関数 | 平均 | 中央値 | 最高 | 最低 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 政令指定都市 | 20 | 708万円 | 705万円 | 771万円 | 640万円 | 35.7 |
| 国家公務員(行政職の平均・人事院) | - | 712万円 | - | - | - | - |
| 都道府県庁 | 47 | 673万円 | 671万円 | 769万円 | 623万円 | 27.5 |
| 市区町村 | 1,721 | 616万円 | 611万円 | 770万円 | 484万円 | 45.7 |
区分の平均でいちばん上にくる国家公務員(712万円)と、いちばん下の市区町村(616万円)の差は96万円です。
区分の差より、勤務地の差のほうが大きい
ここが重要な点です。区分間の差(96万円)より、同じ区分の中の差のほうがはるかに大きいのです。
- 市区町村の中での差:770万円 − 484万円 = 286万円
- 都道府県庁の中での差:769万円 − 623万円 = 146万円
- 国家公務員の中での差:地方機関の係員(22歳)401万円から本府省の課長(50歳)1,488万円まで。役職と勤務地で決まります(人事院のモデル給与・令和8年人事院勧告)
- 政令指定都市の中での差:771万円 − 640万円 = 131万円
つまり「国家公務員を目指すか、市役所を目指すか」で変わるのは平均96万円ですが、 「どこの市役所か」では最大286万円変わります。
年収という一点だけで見るなら、区分の選択より勤務地の選択のほうが影響が大きい、という結果です。
この差の大部分は地域手当によるものです。 地方公務員の給与には、民間賃金水準に応じた地域手当が上乗せされ、 東京23区の20%を上限に地域ごとに段階的に設定されています。 給料表自体は自治体間で大きく変わらないため、 差として現れるのはほぼ地域手当と考えて差し支えありません。
国家公務員はどの府省を選ぶかで変わるか
国家公務員の府省ごとの平均年収は、人事院も内閣人事局も公表していません。 給与は府省ではなく俸給表・役職・年齢・勤務地(本府省か地方機関か)で決まるので、 同じ俸給表の職員なら、どの府省でも同じ役職・年齢・勤務地でほぼ同じ給与になります。
| 勤務先 | 役職 | 年齢 | 年間給与(現行) | 年間給与(勧告後) |
|---|---|---|---|---|
| 地方機関 | 係員(一般職試験(高卒)初任給) | 18歳 | 332万円 | 349万円 |
| 地方機関 | 係員(一般職試験(大卒)初任給) | 22歳 | 384万円 | 401万円 |
| 地方機関 | 係長 | 35歳 | 507万円 | 526万円 |
| 地方機関 | 係長 | 40歳 | 539万円 | 559万円 |
| 地方機関 | 課長 | 50歳 | 708万円 | 731万円 |
| 本府省 | 係員(総合職試験(大卒)初任給) | 22歳 | 494万円 | 515万円 |
| 本府省 | 係長 | 28歳 | 588万円 | 610万円 |
| 本府省 | 課長補佐 | 35歳 | 832万円 | 861万円 |
| 本府省 | 室長 | 40歳 | 1,105万円 | 1,138万円 |
| 本府省 | 課長 | 50歳 | 1,447万円 | 1,488万円 |
| 本府省 | 局長(指定職俸給表) | - | 1,939万円 | 2,003万円 |
| 本府省 | 事務次官(指定職俸給表) | - | 2,524万円 | 2,609万円 |
| 全体 | 平均 | - | 712万円 | 739万円 |
地方公務員と同じく、本府省(東京都特別区)には20%の地域手当が付きます。 「どの府省か」より「霞が関で働くか、地方の出先機関で働くか」のほうが年収を左右します。 詳しくは国家公務員はどの機関が高いのかで扱っています。
年収以外で決めるべき理由
ここまで年収で比較してきましたが、この数字だけで受験先を決めるのは勧めません。 理由は3つあります。
区分の差より、勤務地の差のほうが大きい。 区分間の差は96万円ですが、 同じ市区町村の中では286万円ひらきます。 どの区分を受けるかより、どこで働くかのほうが年収には効きます。
年収は地域手当でほぼ決まる。 高い自治体は生活費も高い地域にあります。 可処分所得や生活水準で見ると、額面の差ほどの違いは残りません。
仕事の性質がまったく違う。 国家公務員は制度設計、都道府県は広域調整、 市区町村は住民に直接向き合う仕事が中心です。転勤の範囲も大きく異なります。 40年間続ける仕事として、この違いのほうが区分間の96万円よりはるかに重い、というのが率直なところです。
数字を読むときの注意
- これは公表値からの換算です。 平均給与月額 × 12ヶ月に、同じ調査で公表されている期末・勤勉手当の年額(実額)を加えて換算しています。 期末・勤勉手当の支給月数は機関ごとに異なります
- 在籍職員全体の平均です。採用直後の年収はこれよりかなり低くなります。 受験先を選ぶ際に見るべきは初任給と昇給カーブですが、 この記事のデータからはそれを読み取ることはできません
- 職種による差は反映されていません。 一般行政職のほか技術職・公安職などが含まれます
- 退職手当・共済年金は含みません
- 313機関は全国のすべての自治体を網羅したものではありません