「公務員と民間、どちらが稼げるのか」はよく議論になりますが、 根拠となる数字が示されないまま語られることが少なくありません。
年収ナビが収録している5,680件の実データで比較してみます。
平均で見ると、ほぼ互角
| 区分 | 件数 | 平均年収 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 国家公務員(行政職俸給表(一)の職員全体) | - | 712万円 | - |
| 上場企業・非上場企業 | 3,783 | 694万円 | 661万円 |
平均年収の差はわずか18万円です。この数字だけを見れば「ほぼ同じ」という結論になります。
ただし、この比較にはいくつか注意が必要です。
- 国家公務員の数値は、人事院が給与勧告で示している行政職俸給表(一)の職員全体の平均年間給与(現行の給与・実額)です。 府省ごとの平均年収は公表されていないので、府省別には比べません
- 民間企業の数値は有価証券報告書に記載された実測値ですが、有価証券報告書を提出している企業、 つまり主に上場企業が対象です。日本の企業の大多数を占める中小企業は含まれていません
- どちらも組織全体の平均であり、年齢・役職による差は反映されていません
決定的に違うのは「何で年収が決まるか」
平均が近いことよりも重要なのは、年収の決まり方です。
国家公務員の給与は、府省ではなく俸給表・役職・年齢・勤務地(本府省か地方機関か)で決まります。 人事院が示しているモデル給与(令和8年人事院勧告)を並べると、次のとおりです。
| 勤務先 | 役職 | 年齢 | 年間給与(現行) | 年間給与(勧告後) |
|---|---|---|---|---|
| 地方機関 | 係員(一般職試験(高卒)初任給) | 18歳 | 332万円 | 349万円 |
| 地方機関 | 係員(一般職試験(大卒)初任給) | 22歳 | 384万円 | 401万円 |
| 地方機関 | 係長 | 35歳 | 507万円 | 526万円 |
| 地方機関 | 係長 | 40歳 | 539万円 | 559万円 |
| 地方機関 | 課長 | 50歳 | 708万円 | 731万円 |
| 本府省 | 係員(総合職試験(大卒)初任給) | 22歳 | 494万円 | 515万円 |
| 本府省 | 係長 | 28歳 | 588万円 | 610万円 |
| 本府省 | 課長補佐 | 35歳 | 832万円 | 861万円 |
| 本府省 | 室長 | 40歳 | 1,105万円 | 1,138万円 |
| 本府省 | 課長 | 50歳 | 1,447万円 | 1,488万円 |
| 本府省 | 局長(指定職俸給表) | - | 1,939万円 | 2,003万円 |
| 本府省 | 事務次官(指定職俸給表) | - | 2,524万円 | 2,609万円 |
| 全体 | 平均 | - | 712万円 | 739万円 |
地方機関の係員(18歳)の349万円から、本府省の課長(50歳)の1,488万円まで、 役職と勤務地を決めれば年収がほぼ決まります。 一方、民間企業は会社ごとに248万円から2,295万円まで、10倍近い開きがあります。
平均と中央値の関係にも、民間の分布の偏りが表れています。
- 民間企業:平均694万円、中央値661万円(平均のほうが高い)
平均が中央値より高いということは、一部の高年収企業が平均を押し上げているということです。 実際、民間企業3,783社のうち国家公務員の平均712万円を上回るのは1,391社、全体の36.8%にとどまります。
つまり「平均では互角」でも、社数で見れば多くの企業が国家公務員の平均を下回っています。
企業規模で大きく変わる
民間企業の年収は、従業員数と強く関係しています。
| 従業員数 | 社数 | 平均年収 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 100人未満 | 948社 | 694万円 | 651万円 |
| 100〜299人 | 1,006社 | 657万円 | 624万円 |
| 300〜999人 | 1,063社 | 669万円 | 649万円 |
| 1,000〜2,999人 | 515社 | 751万円 | 723万円 |
| 3,000〜9,999人 | 198社 | 834万円 | 799万円 |
| 10,000人以上 | 47社 | 827万円 | 835万円 |
従業員1万人以上の大企業では平均827万円と、国家公務員の712万円を上回ります。 逆に従業員300人未満の企業では平均675万円で、国家公務員を下回ります。
「公務員より稼げる民間企業」は存在しますが、それは主に大企業です。
地方公務員はどうか
地方公務員は国家公務員よりやや低い水準です。
| 区分 | 件数 | 平均年収 |
|---|---|---|
| 都道府県 | 47 | 673万円 |
| 政令指定都市 | 20 | 708万円 |
| 市区町村 | 1,721 | 616万円 |
いずれも総務省「地方公務員給与実態調査」の平均給与月額から年収に換算した値(公表値からの換算)です (算出式は出典と算出方法に記載)。
この比較から言えること
- 平均年収だけを比べても意味がありません。 分布の形を見る必要があります
- 公務員は年収の予測可能性が高いという特徴があります。役職・年齢・勤務地が決まれば、俸給表で年収がほぼ決まります
- 民間は上振れも下振れも大きい。同じ「上場企業」でも248万円から2,295万円まであります
- 企業規模の影響が大きい。大企業とそれ以外では200万円以上の差があります
どちらが有利かは、比較の仕方で結論が変わります。 「期待値」で見れば互角、「下振れリスクの小ささ」で見れば公務員、 「上振れの可能性」で見れば民間の大企業、ということになります。
データの確認方法
このページの数値はすべて年収ナビ収録データの集計です。個別の組織の数値は以下から確認できます。