「大企業のほうが給料が高い」はよく言われますが、 どこから「大企業」なのか、差はどれくらいなのかは曖昧なまま語られがちです。
有価証券報告書から取得した従業員数と平均年収がそろっている3,777社で検証しました。
従業員規模別の平均年収
| 従業員数 | 社数 | 平均年収 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 100人未満 | 948社 | 694万円 | 651万円 |
| 100〜299人 | 1,006社 | 657万円 | 624万円 |
| 300〜999人 | 1,063社 | 669万円 | 649万円 |
| 1,000〜2,999人 | 515社 | 751万円 | 723万円 |
| 3,000〜9,999人 | 198社 | 834万円 | 799万円 |
| 10,000人以上 | 47社 | 827万円 | 835万円 |
わかったこと
1,000人が分かれ目
従業員1,000人未満では、規模と年収にほとんど関係がありません。
- 100人未満:694万円
- 100〜299人:657万円
- 300〜999人:669万円
この3区分は一直線に並んでおらず、100人未満がいちばん高くなっています。 理由は次の節で説明します。
ところが1,000人を超えると、はっきりと上がります。
- 1,000〜2,999人:751万円
- 3,000〜9,999人:834万円
300〜999人(669万円)から1,000〜2,999人(751万円)への 段差がいちばん大きく、1,000人が実質的な分かれ目になっています。
いちばん大きい区分が、いちばん高いわけではない
意外なことに、10,000人以上(827万円)は 3,000〜9,999人(834万円)より低くなります。
有価証券報告書の従業員数は提出会社(単体)の人数です。 単体で1万人を超えるのは47社しかなく、 その多くが自動車・輸送機、物流・運輸、小売・流通といった、 現場の従業員を多く抱える業種です。 一方、3,000〜9,999人の区分は電機・電子や建設・不動産が中心で、 これらは業種そのものの水準が高い区分です。
つまりここで効いているのは会社の大きさではなく、業種です。 規模と年収の関係は1,000人あたりまでで頭打ちになり、 そこから先は業種構成のほうが強く出る、というのがこのデータの読み方になります。
なお10,000人以上の区分は、平均827万円に対し 中央値835万円と、両者がほぼ一致します。 突出した高年収企業がおらず、均質な集団だということです。
100人未満が「谷」ではない理由
100人未満(694万円)が100〜299人(657万円)より高いのは、 このカテゴリに持株会社が多く含まれるためです。
有価証券報告書の平均年収は提出会社(親会社単体)の数値です。 グループを統括する持株会社は、在籍者が経営企画・財務などの本社機能に絞られ、 役員に近い層の比率が高くなります。その結果、少人数で高い平均年収が出ます。
実際に切り分けてみると、はっきり差が出ます。 ここでは連結の従業員数が単体の10倍以上ある会社を持株会社的な構造と見なしました。
| 100人未満の内訳 | 社数 | 平均年収 |
|---|---|---|
| 持株会社的な構造 | 379社 | 744万円 |
| それ以外 | 569社 | 661万円 |
持株会社を除くと661万円まで下がり、 100〜299人(657万円)や300〜999人(669万円)と ほぼ同じ水準になります。「小さい会社ほど給料が高い」わけではありません。
年収ナビでは、従業員30人未満で平均1,000万円以上のレコードに注記を表示しています。 数字自体は有価証券報告書のとおりですが、組織全体の実態を代表していないためです。
中央値で見ても傾向は同じ
すべての区分で平均が中央値を上回っています。 一部の高年収企業が平均を押し上げているということです。
- 100人未満:平均694万円/中央値651万円
- 3,000〜9,999人:平均834万円/中央値799万円
それでも中央値だけで比べると、3,000〜9,999人(799万円)と 300〜999人(649万円)で差があり、 1,000人を境にした差は本物だと言えます。
公務員と比べると
国家公務員(行政職俸給表(一))の平均年間給与は712万円です(人事院の公表値)。この水準は、 上の表では従業員300〜999人の企業(669万円)と 1,000〜2,999人(751万円)の間にあたります。
- 従業員1,000人未満の上場企業 → 国家公務員とほぼ同水準か、やや上
- 従業員1,000人以上の上場企業 → 民間のほうが高い
「公務員と民間、どちらが高いか」の答えは、比較する企業の規模で変わります。
この分析の限界
- 有価証券報告書を提出している企業が対象です。日本の雇用の大半を占める 中小企業(有価証券報告書の提出義務がない企業)は含まれていません
- 単体(親会社)の従業員数と年収であり、連結ベースではありません
- 平均年齢の影響を除いていません。 歴史の長い大企業ほど平均年齢が高く、 そのぶん平均年収も上がります。この分析は年齢を統制していないため、 「規模の効果」と「年齢構成の効果」が混ざっています
- 業種の影響も除いていません。大企業が多い業種と少ない業種があります
したがってこの表は相関を示すものであり、因果を示すものではありません。 「大きい会社に入れば年収が上がる」ことを証明したわけではありません。
データについて
- 集計対象:年収ナビ収録のうち、従業員数と平均年収の両方がそろっている上場・非上場企業3,777社
- 出典:有価証券報告書(EDINET)
- 詳細は出典と算出方法をご覧ください