「市役所と県庁はどちらが年収が高いのか」は、受験先を選ぶときによく出る疑問です。
これに平均値どうしの比較で答えると「県庁のほうが高い」で終わってしまいますが、 それは実態の半分しか言えていません。
この記事では、収録している市区町村222自治体と都道府県庁47庁を1件ずつ並べ、 2つの分布がどれだけ重なっているかを見ます。
数値は総務省「地方公務員給与実態調査」の平均給与月額から年収換算した推計値です。 換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。
結論:平均では県庁が15万円高い。ただし差はそれだけ
| 区分 | 件数 | 平均年収 | 中央値 | 下位25% | 上位25% | 最高 | 最低 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 都道府県庁 | 47 | 657万円 | 650万円 | 633万円 | 672万円 | 812万円 | 608万円 |
| 市区町村 | 222 | 642万円 | 635万円 | 622万円 | 655万円 | 782万円 | 572万円 |
平均の差は14.6万円、月あたりにすると1.2万円ほどです。 「県庁のほうが高い」は事実ですが、受験先を決める材料になるほどの差ではありません。
4分の1の市区町村が、県庁の平均を上回っている
分布を重ねると、平均値の比較では見えないことが出てきます。
- 市区町村222自治体のうち54件(24.3%)が、県庁の平均657万円を上回る
- 都道府県庁47庁のうち17庁(36.2%)が、市区町村の平均642万円を下回る
- 市区町村の最高782万円は、47都道府県庁の中に置くと2位相当(1位の東京都庁812万円に次ぐ)
- 県庁の最低608万円を上回る市区町村は199件(89.6%)
つまり「市役所か県庁か」で決まる部分より、「どの市役所か」「どの県庁か」で決まる部分のほうが大きい、というのが分布から読み取れることです。
値域はほぼ完全に重なっている
両者の年収が取りうる範囲を並べると、重なりの大きさがはっきりします。
市区町村 572 ────────────────────────── 782
都道府県庁 608 ──────────────────────────── 812
└──── 重なる範囲 608〜782 ────┘
608〜782万円という重なる範囲に、市区町村203件(91.4%)と県庁46庁(97.9%)が入ります。 別々の分布というより、ほぼ同じ分布を見ていると言ったほうが実態に近い状態です。
ばらつきの大きさもほぼ同じです。 標準偏差は市区町村33.7、都道府県庁36.2。 平均に対する比率(変動係数)にすると5.3%と5.5%で、差はほとんどありません。
上位と下位の顔ぶれ
都道府県庁の上位・下位はこうなっています。
| 都道府県庁 | |
|---|---|
| 上位 | 東京都庁 812万円/神奈川県庁 728万円/大阪府庁 718万円/愛知県庁 712万円/兵庫県庁 702万円 |
| 下位 | 沖縄県庁 608万円/宮崎県庁 615万円/青森県庁 615万円/秋田県庁 618万円/佐賀県庁 620万円 |
上位は首都圏・近畿圏・中京圏に集中し、下位は地方に集中します。 この並びは市区町村側でも同じで、 市区町村の上位は港区782万円・千代田区775万円・渋谷区770万円と東京23区が占めます。
つまり両者を分けているのは「市か県か」ではなく「どの地域か」です。 地方公務員の給与には地域手当という調整が入り、 民間賃金水準の高い地域ほど支給率が高くなります(東京23区の20%が上限)。 同じ区分・同じ経験年数でも、勤務地によって年収が変わる設計になっています。
民間の分布に重ねると、両者はほぼ同じ位置
当サイトは上場企業3,782社の平均年収を1社ずつ持っているので、 2つの区分を民間の分布に置いて位置を数えられます。
| 区分 | 平均年収 | 上場企業3,782社の中での位置 | この額以上の企業数 |
|---|---|---|---|
| 都道府県庁 | 657万円 | 下位から48.6% | 1,944社 |
| 市区町村 | 642万円 | 下位から45.0% | 2,079社 |
差は3.6ポイント、社数にして135社分です。 上場企業の中央値は662万円なので、どちらもほぼ中央値の位置にあります。
民間側は下位10%の492万円から上位1%の1,419万円まで2.9倍に開きますが、 市区町村は572万〜782万で1.37倍、都道府県庁は608万〜812万で1.34倍です。 散らばりの小ささが、民間と比べたときの地方公務員の特徴になります。
受験先を選ぶときにどう使うか
年収だけで見るなら、判断の順序は次のようになります。
- 区分(市役所か県庁か)はほとんど効かない。 平均差は15万円で、分布は9割方重なっています
- 勤務地が最も効く。 東京都庁812万円と沖縄県庁608万円では204万円、 港区782万円と最低の市町村572万円では210万円の差があります
- 同じ地域なら、区分による差はさらに小さくなる。 上位を占めるのがどちらも大都市圏の自治体である以上、 「都市部の市役所」と「地方の県庁」なら前者のほうが高いことが普通にあります
年収以外の要素(仕事の内容、異動の範囲、転勤の有無)のほうが、 年収差15万円より大きな違いを生む可能性が高い、というのがこのデータの示すところです。
数字を読むときの注意
- これは推計値です。 平均給与月額 ×(12 + 4.45ヶ月)で年収換算しており、実額とは差が生じます。 期末・勤勉手当の支給月数は自治体ごとに異なります
- 在籍職員全体の平均です。新規採用職員はこれよりかなり低く、管理職はこれより高くなります
- 職種による差は反映されていません。 一般行政職のほか技術職・保育士・消防職などが含まれ、 適用される給料表が異なります
- 収録しているのは全1,741市区町村のうち222自治体です。全数ではないため、 「市区町村の平均」は収録分の平均であり、全国の市区町村の平均とは一致しません
- 退職手当・共済年金は含みません。 生涯収入で比較する場合は別途考慮が必要です