「若い公務員の離職が増えている」という話をよく見かけます。 実際はどうなのか、総務省「地方公務員の退職状況等調査」の 平成25年度から令和6年度までの12年度分を並べて確かめました。

先に結論を書きます。

  • 40歳未満で普通退職した人は20,697人から35,565人へ、1.72倍に増えています。 同じ期間の地方公務員の職員数は+2.2%しか変わっていません
  • ただし30歳未満は令和4年度から横ばいです(18,231人 → 18,418人 → 18,299人)
  • 「普通退職が78,760人」という数字は、そのままでは若手の離職を表していません。 定年の引上げで60歳で辞めた人など、性格の違う退職が混ざっています

「普通退職」に入っているもの

調査は離職の理由を、定年退職・勧奨退職・早期退職募集・普通退職・免職・死亡などに分けています。 自己都合で辞めた人は普通退職に入りますが、普通退職にはほかにも次のものが含まれます。

  • 在職期間の通算を伴う退職:人事交流などで、退職金を受け取らずに国や別の自治体へ移った人。 令和6年度は9,113人
  • 60歳以降、定年の前に辞めた人:定年は令和5年度から2年に1歳ずつ65歳まで上がっています。 60歳で辞める人は、以前は「定年退職」でしたが、いまは普通退職に数えられます
  • 定年前再任用短時間勤務になるための退職:60歳以降に短時間勤務へ移るため、いったん退職した人。 令和6年度は4,513人

令和6年度の普通退職78,760人のうち、在職期間の通算と短時間勤務への移行を除いた 「自己都合退職等」は65,134人です。そのなかにも60歳で辞めた人が18,452人います。

60歳以上で普通退職した人は、令和4年度の705人から令和5年度は18,908人に跳ね上がりました。 若手が急に辞め始めたのではなく、定年制度が変わって数え方が変わったためです。

そこで、この記事では在職期間の通算を除き、60歳未満で辞めた人を比べます。

年度 普通退職 うち在職期間の通算 うち60歳以上 60歳未満で辞めた人 職員数(4月1日)
平成25年度 42,573 11,112 538 30,923 2,752,484
平成26年度 38,982 8,624 476 29,882 2,743,654
平成27年度 40,663 8,957 513 31,193 2,738,337
平成28年度 40,349 9,011 445 30,893 2,737,263
平成29年度 40,676 8,386 662 31,628 2,742,596
平成30年度 43,775 8,523 696 34,556 2,736,860
令和元年度 44,979 7,950 606 36,423 2,740,653
令和2年度 44,181 8,575 716 34,890 2,762,020
令和3年度 49,767 8,868 790 40,109 2,800,661
令和4年度 60,784 14,681 705 45,398 2,803,664
令和5年度 76,082 9,036 18,908 48,138 2,801,596
令和6年度 78,760 9,113 19,667 49,980 2,811,749

60歳未満で辞めた人は、平成25年度の30,923人から令和6年度の49,980人へ1.62倍になりました。 この間、職員数は2,752,484人から2,811,749人で、+2.2%の変化にとどまります。 職員全体が増えたから辞める人も増えた、という説明は成り立ちません (年代ごとの職員数の変化は、末尾の注意を参照してください)。

どの年代で増えているのか

普通退職者(在職期間の通算を除く)を、辞めたときの年齢で分けました。

年度 30歳未満 30〜39歳 40〜59歳 60歳以上 計
平成25年度 10,680 10,017 10,226 538 31,461
平成26年度 10,554 9,904 9,424 476 30,358
平成27年度 11,110 10,197 9,886 513 31,706
平成28年度 11,335 10,093 9,465 445 31,338
平成29年度 11,914 10,201 9,513 662 32,290
平成30年度 13,427 11,274 9,855 696 35,252
令和元年度 14,719 11,841 9,863 606 37,029
令和2年度 13,887 11,539 9,464 716 35,606
令和3年度 16,309 13,131 10,669 790 40,899
令和4年度 18,231 15,161 12,006 705 46,103
令和5年度 18,418 16,312 13,408 18,908 67,046
令和6年度 18,299 17,266 14,415 19,667 69,647
年代 平成25年度 令和6年度 倍率
30歳未満 10,680人 18,299人 1.71倍
30〜39歳 10,017人 17,266人 1.72倍
40〜59歳 10,226人 14,415人 1.41倍

増えているのは30代までです。 30歳未満も30代も、ほぼ同じ1.72倍前後で増えています。 40〜59歳も増えていますが、伸びは1.41倍で、若い層ほどではありません。

40歳未満の普通退職者は、12年度のうち前年度より増えた年度が9回あります。 とくに令和3年度(29,440人)と令和4年度(33,392人)で大きく伸びました。

一方で、30歳未満は令和4年度の18,231人から、18,418人、18,299人と横ばいです。 令和5年度以降も伸びているのは30代(令和4年度15,161人 → 令和6年度17,266人)で、 40歳未満全体の増え方は緩やかになっています。

辞めるときに知っておきたいお金の差

若いうちに辞めるときに見落としやすいのが退職金です。 公務員の退職金は、勤続年数が短く、自己都合で辞めるほど大きく減る仕組みになっています。

勤続年数 自己都合の支給率 定年の支給率
5年 2.511 4.185
10年 5.022 8.370
15年 10.379 16.217
20年 19.669 24.587

支給率は「退職時の給料月額の何か月分か」です。 勤続10年で自己都合なら給料月額の5.022か月分で、定年退職の率の60%しかありません。 勤続19年以下の自己都合は、率がさらに60〜90%に減らされるためです。

自分の勤続年数と給料月額での額は、公務員の退職金の計算で、 税金を引いた手取りまで確かめられます。

辞めたあとの年収については、公務員から民間へ転職すると年収はどう変わるかと、 年齢と年収を入れて民間企業のどのあたりかを数える公務員と民間の年収を比べるにまとめています。

数字を読むときの注意

  • 人数の比較で、率ではありません。 年代別の職員数は使っていないので、 「30代の何%が辞めたか」は分かりません。職員全体の数はほとんど変わっていませんが、 定年退職者の補充で若い職員の数が増えていれば、辞める若手の人数もそのぶん増えます。 この点はこの記事では確かめていません
  • 普通退職は自己都合退職だけではありません。 諭旨免職なども含みます。 在職期間の通算を伴う退職は、この記事の年代別の表からは除いています(調査の第5表の定義どおり)
  • 会計年度任用職員・臨時的任用職員・再任用職員は調査の対象外です
  • 職員数は総務省「地方公共団体定員管理調査」の各年4月1日現在の値で、退職状況等調査とは対象の範囲が完全には一致しません
  • 令和4年度は在職期間の通算を伴う退職が14,681人と例年より多く、普通退職の総数が大きく見えます。 この記事の年代別の数字はこれを除いています
  • 数値は総務省「地方公務員の退職状況等調査」各年度の第1表(職種別事由別離職者数)と 第5表(普通退職者の年齢)の合計の行です。PDF の表を転記し、内訳の合計が総数と一致することを確認しています
  • 詳細は出典と算出方法および免責事項をご覧ください

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