公務員の年収差はほぼ地域手当で決まるで見たとおり、 市区町村1,721団体の年収差は地域手当の支給率でおおむね説明がつきます (相関+0.71)。
では、地域手当の支給率が全団体で同じ集団を見たらどうなるか。 東京23区(特別区)は、23区すべてが支給率20%で並んでいます。 制度上の条件がそろっているのだから、年収も横並びになりそうなものです。
実際には60万円ひらいていました。
数値は総務省「地方公共団体別給与等の比較」(令和7年)の一般行政職によるものです。 出典と年収への換算方法はデータの出典と算出方法に記載しています。
23区の平均年収ランキング
| 順位 | 区 | 平均年収(換算) |
|---|---|---|
| 1 | 台東区役所 | 738万円 |
| 2 | 足立区役所 | 730万円 |
| 3 | 目黒区役所 | 717万円 |
| 4 | 新宿区役所 | 715万円 |
| 5 | 品川区役所 | 714万円 |
| 6 | 港区役所 | 713万円 |
| 7 | 杉並区役所 | 708万円 |
| 8 | 中野区役所 | 707万円 |
| 8 | 練馬区役所 | 707万円 |
| 10 | 墨田区役所 | 705万円 |
| 10 | 江戸川区役所 | 705万円 |
| 12 | 世田谷区役所 | 704万円 |
| 13 | 荒川区役所 | 702万円 |
| 14 | 中央区役所 | 698万円 |
| 15 | 千代田区役所 | 695万円 |
| 15 | 大田区役所 | 695万円 |
| 17 | 豊島区役所 | 693万円 |
| 18 | 文京区役所 | 692万円 |
| 19 | 北区役所 | 691万円 |
| 20 | 江東区役所 | 688万円 |
| 21 | 板橋区役所 | 680万円 |
| 22 | 葛飾区役所 | 679万円 |
| 23 | 渋谷区役所 | 678万円 |
平均は702万円、最高738万円、最低678万円。 差は60万円です。
市区町村1,721団体の平均が616万円ですから、 23区はどこも全国平均をかなり上回ります。 最下位の区(678万円)でも全国平均を大きく超えています。
制度上の条件は、23区でほぼそろっている
年収差の説明に使われる3つの指標を23区で並べると、どれもほとんど動きません。
| 指標 | 23区の範囲 | 全国1,721団体の平均 |
|---|---|---|
| 地域手当の支給率 | 全区20%(幅0) | 2.4% |
| ラスパイレス指数 | 95.5〜99.9 | 97.2 |
| 平均年齢 | 37.6〜40.9歳 | 41.8歳 |
ラスパイレス指数は国の給与水準を100としたときの水準を示す指数です (ラスパイレス指数の記事で詳しく扱っています)。 23区は95.5〜99.9の 4.4ポイント幅に収まっていて、 これで60万円の差を説明することはできません。
年収との相関を取っても、平均年齢は+0.31、 ラスパイレス指数は-0.09で、ほとんど効いていません。
差をつくっているのは給料本体ではなく諸手当
総務省のデータは、平均給与月額を 給料月額A(給料表にもとづく本体)と諸手当月額Bに分けて公表しています。 23区の23団体でそれぞれの範囲を取りました。
| 内訳 | 23区の最低 | 23区の最高 | 開き |
|---|---|---|---|
| 給料月額A(本体) | 296,300円 | 315,700円 | 19,400円 |
| 諸手当月額B | 111,486円 | 146,267円 | 34,781円 |
給料本体の開きより、諸手当の開きのほうが大きい。 年収との相関でも差がはっきり出ます。
| 要因 | 23区での年収との相関 |
|---|---|
| 諸手当月額B | +0.79 |
| 給料月額A(本体) | +0.46 |
| 平均年齢 | +0.31 |
| ラスパイレス指数 | -0.09 |
諸手当Bには地域手当も含まれます。 ただし地域手当は給料月額に率を掛けたものなので、 支給率が全区20%で同じである以上、 地域手当が生む差は給料本体の開き(19,400円)の20%程度にとどまります。 諸手当の開き34,781円の大半は、 地域手当以外の手当(時間外勤務手当・住居手当・扶養手当・管理職手当など)と、 それを受け取る職員の構成の違いによるものです。
同じ給料表を使い、同じ地域手当率で、隣接した区どうしでも、 手当の部分で年収は60万円動く。 これが23区のデータから読み取れることです。
23区は給料本体が全国平均より低い
もうひとつ、平均で比べると意外な結果になります。
| 給料月額A | 諸手当月額B | 平均年齢 | |
|---|---|---|---|
| 特別区23区 | 306,213円 | 128,573円 | 39.4歳 |
| 全国1,721団体 | 320,146円 | 62,533円 | 41.8歳 |
23区の給料本体は、全国平均より低い。 一方で諸手当は2倍以上あります。
給料本体が低いのは、23区の平均年齢が 39.4歳と全国平均(41.8歳)より若く、 給料表の上での位置が低いためと考えられます。 23区の年収の高さは、給料表の水準ではなく手当で成り立っています。
この構造は全国でも同じ方向に働いています。 市区町村1,721団体で見ると、 年収との相関は諸手当が+0.88、 給料本体が+0.67です。
23区より高い市が、同じ東京都内にある
23区だけを見ていると気づきませんが、 東京都の市部(26市)の平均は721万円で、 23区の平均702万円を上回ります。
| 順位 | 市 | 平均年収(換算) |
|---|---|---|
| 1 | 小平市役所 | 770万円 |
| 2 | 武蔵野市役所 | 764万円 |
| 3 | 三鷹市役所 | 756万円 |
| 4 | 小金井市役所 | 754万円 |
| 5 | 国立市役所 | 752万円 |
| 6 | 日野市役所 | 737万円 |
| 7 | 町田市役所 | 736万円 |
| 8 | 狛江市役所 | 730万円 |
| 9 | 国分寺市役所 | 729万円 |
| 10 | 府中市役所(東京都) | 726万円 |
小平市役所の770万円は、23区の最高(738万円)より高い。 市部の地域手当は最も高い市でも18%で、 23区の20%を下回るのに、逆転しています。 市部は平均年齢が41.7歳(23区は39.4歳)と高く、 給料月額Aも327,777円(同306,213円)と上回ります。 給料表の上での位置が高いぶんが、地域手当の差を打ち消しています。
都道府県庁で最も高い東京都庁(769万円)も、 23区のすべての区を上回ります。
「東京都内の自治体=23区が最上位」ではありません。 市役所と県庁はどっちが年収が高いのかで見たのと同じで、 区分の名前より、団体ごとの数字を見たほうが実態に近づきます。
上場企業の分布に重ねる
23区の水準が民間と比べてどこにあたるかを、 上場企業3,778社の分布に重ねて数えます。
| 対象 | 平均年収 | 上場企業3,778社の中での位置 | この額以上の企業数 |
|---|---|---|---|
| 23区の最高 | 738万円 | 下位から67.7% | 1,222社 |
| 23区の平均 | 702万円 | 下位から60.8% | 1,482社 |
| 23区の最低 | 678万円 | 下位から54.1% | 1,733社 |
| (参考)全国の市区町村平均 | 616万円 | 下位から38.5% | 2,323社 |
上場企業の中央値は661万円です。 23区は最下位の区でも上場企業のほぼ中央値に並び、上位の区は上位32.3%に入ります。
ただし23区の中の60万円の差は、 分布上の位置にすると13.5ポイント動きます。 市役所職員は民間より恵まれているのかで見た 全国の市区町村ほどではないにせよ、「23区の公務員」でひとくくりにはできません。
数字を読むときの注意
- 一般行政職の数値です。 保育士・技能労務職・消防職などは含まれません
- 公表値からの換算です。 総務省が公表しているのは平均給与月額で、 年収は平均給与月額×12ヶ月に、期末・勤勉手当の年額(実額)を加えて換算しています
- 在籍者全体の平均です。20代はこれよりかなり低く、50代は高くなります
- 平均年齢の違いを含んだ数字です。若い職員が多い団体は平均年収も低く出ます
- 退職手当は含みません
- 企業側の数値は有価証券報告書の単体の平均年間給与です