薬学部のパンフレットや受験情報で一番目立つ数字は「国家試験合格率」です。 ところが、この合格率には分母の違う3通りがあり、どれを見るかで同じ学部の数字が半分近くまで変わります。
この記事では、厚生労働省の「薬剤師国家試験 大学別合格者数」と、文部科学省の「薬学部の6年制課程における退学状況等」を使って、 3つの合格率を並べます。数字はすべて公表値か、公表値の人数から計算した割合です。 学部ごとの数字は薬学部の一覧で並べ替えて見られます。
3つの合格率
| 分母 | 何がわかるか | 第111回(2026年)の全国 |
|---|---|---|
| 受験者 | 試験を受けた人のうち、何割が受かったか(厚労省の公表値) | 68.5% |
| 出願者 | 出願した人のうち、何割が受かったか(計算値) | 61.3% |
| 入学者 | 入学した人のうち、何割が国家試験に合格したか(文科省の調査) | 2019年度入学者で中央値63.0% |
大学がいちばんよく使うのは、このうち新卒の、受験者に対する合格率です。全国では86.2%。 新卒は既卒(41.3%)よりずっと合格しやすいので、ここに挙げた数字の中で最も高くなります。
出願したのに受験しなかった人がいる
第111回は、出願者14,261人のうち1,487人が受験していません。 厚労省の合格率はこの人たちを分母に入れないので、出願者に対する割合(61.3%)は合格率(68.5%)より低くなります。 新卒に限ると、受験者に対しては86.2%、出願者に対しては75.8%です。
受験しなかった理由は公表されていません。卒業見込みで出願したものの卒業できなかった人のほか、体調などの理由も含まれます。
入学した人のうち、何割が薬剤師になれたか
受験者・出願者を分母にした数字では、途中で留年や退学をした人が見えません。 文部科学省は毎年、学部ごとに「その年度に入学した人のうち、何割が卒業し、何割が国家試験に合格したか」を公表しています。
2019年度に入学した人(留年せずに進めば2025年3月に卒業・受験した学年)について、75学部の数字は次のとおりです。
- 国家試験に合格した割合:中央値63.0%(最も低い学部14.8%、最も高い学部100.0%)
- 卒業した割合:中央値72.7%
- 退学等の割合:中央値10.0%(20%以上の学部が14)
- 合格した割合が50%未満の学部:23学部(うち30%未満が6学部)
設置者別の中央値は、国立83.1%(14学部)、公立76.9%(4学部)、私立57.9%(57学部)です。
新卒の合格率が90%を超えても、入学者の半分しか合格していない学部がある
第111回で新卒の合格率(受験者に対する割合)が90%以上だった学部は27あります。 このうち6学部は、2019年度に入学した人のうち国家試験に合格した割合が60%に届いていません。
| 学部 | 新卒の合格率(受験者) | 新卒の出願者に対する割合 | 2019年度入学者のうち国試に合格 | 退学等 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道医療大学 | 98.7% | 55.1% | 41.8% | 13.3% |
| 九州医療科学大学 | 100.0% | 53.6% | 46.7% | 25.6% |
| 鈴鹿医療科学大学 | 90.3% | 74.7% | 47.2% | 12.3% |
| 武庫川女子大学 | 91.0% | 71.7% | 48.5% | 14.8% |
| 高崎健康福祉大学 | 93.1% | 88.2% | 53.7% | 17.9% |
| 就実大学 | 90.2% | 68.8% | 59.6% | 13.8% |
新卒の合格率と、入学者のうち合格した割合の差は、主に次の2つから生まれます。
- 留年・退学:6年で卒業できなかった人や退学した人は、新卒の受験者に入りません
- 出願したのに受験しなかった人:受験者を分母にした合格率には入りません
どちらも、受験生と保護者が学部を選ぶときに知りたい部分です。 新卒の合格率が高いこと自体は事実ですが、それだけで「入れば薬剤師になれる」とは読めません。
学部を比べるときに見る順番
- 入学者のうち国家試験に合格した割合(文科省):入学から見た結果。最も実態に近い
- 退学等の割合と卒業した割合:どこで人が減っているか
- 出願者に対する合格の割合:受験しなかった人を含めた最終学年の結果
- 新卒の合格率:大学が出す数字。上の3つと並べて読む
学部ごとのページでは、この4つを1画面で見られます。
数字を読むときの注意
- 入学年度別の割合は、2025年5月1日時点の数字です。2019年度入学者で留年した人が、この後に卒業・合格すると割合は上がります
- 受験者が少ない学部は、数人の違いで割合が大きく動きます。 人数もあわせて見てください
- 文科省の資料には、国家試験に合格した割合が卒業した割合を上回る年がある学部があります。資料のとおりに載せています
- 厚労省は国家試験を大学単位で、文科省は学部単位で公表しています。別キャンパスの学部は、国家試験の数字が本体に含まれていると見られます